音楽の友5月号掲載:ミラノでブレハッチに会う

取材・文/写真:ポーランド市民交流友の会 影山美恵子 2008.5/5

『絶賛されたフランス、イタリアでのリサイタル』

「私の演奏を多くの方に聞いて頂く。それが私の夢です.」ラファウ・ブレハッチは、ショパンコンクール優勝を皮切りに、着々と夢を実現させ国際的キャリアを積みはじめた。昨年のウィーンのコンツェルトハウス公演では、『ピアノ界のニューフェイス。彼は最高レベルの音楽性を示す』とオーストリア最大の日刊紙クローネン・ツァイトゥンが絶賛。オランダ公演では、伝統的かつ世界的なオーケストラの拠点であるコンセルトヘボウで演奏し大喝采をうけ、オランダ有力日刊紙「人民新聞」が『ブレハッチ、ワイルドで官能的な魅力をショパン音楽に付与』と熱く報道した。

演奏後ファンに囲まれて

 今年の演奏旅行はフランス、パリ・シャトレ座からスタートした。「要求度の高いプログラム編成と、常連聴衆の組み合わせ」で実績を積む恒例演奏会だ。フランスの著名音楽評論家シモン・コルレー氏は『ブレハッチのモーツアルトソナタ第9番は、確固として音楽を支配し、放縦な印象は一切なく、心ひかれる魅力で聴衆を惹きつける。第1章アレグロの、ベートーヴェン的な自発性(速いテンポ、生き生きしたコンスピリート)、第2章アンダンテでの曲線部分でもよく歌っており(癒しに表情豊かさプラスされ)、洗練と技巧が見られる(最終章ロンド)』と感嘆。さらに昨年ブレハッチのCD「ショパン:前奏曲集」についても『早いパッセージでの流暢さと明晰さ(3,8,10,16番)、繊細な色彩感(2番)、また、美しい深さをもった響き(9,20番)、ラフマニノフを彷彿とさせる雷鳴のような響き(12,14,22番)、そして奇跡のような繊細さ(23番)。ラファウ・ブレハッチは、実にさまざまなことができる。』と彼を唸らせ、フランスの音楽ファンはブレハッチの魅力を堪能した。

上(演奏会が開催されたミラノ・オウディトリウム)下(溢れんばかりの観客に隙間もないホール)

 続くイタリアでは、「若手世代で最も偉大なヴィルトゥオーソの1人」と讃えられた。とりわけヨーロッパで絶対的支持のあるコリエレ・デラ・セラ(イタリア最大の全国紙)では、彼の演奏会を、『この若いポーランド人ピアニストが、ショパンの世界を表現するにふさわしいという最たる証拠。』と伝え、ブレハッチの演奏に魅了された音楽評論家たちのコメントを次々に掲載、そのニュースはヨーロッパ中を駆け巡った。

演奏後のリラックスしたブレハッチ

『私の演奏は、古典派の曲の演奏法の影響を受けているともいわれます。』

-------イタリアでも客席は超満員の大盛況でしたね。

ラファウ(以下R)イタリアの方は、感動の表現を全身であらわされます。お国柄でしょうか? あまりのヒートアップに、少し戸惑いました。(笑)。

-------最近の演奏会はショパン以外の作曲家も取り入れられていますね。

R:演奏会では、50%ショパン、50%はバッハ、ベートーヴェン、ドビュッシー、シマノフスキと組み込んでいます。ショパンだけを演奏するのは、好ましくないと自分でも思います。

 ショパン以外の作品として、例えばハイドンのシンプルな美しさは魅力的です。そしてバッハ、以前まで教会でオルガンを弾いていたので、バッハの音楽には随分親しんできました。もちろんオルガンとピアノでは奏法・音楽作りは全く違います。ピアノはシンプルで演奏者のテクニックの表現に頼ることになります。オルガンは音も操作でき複雑な音色や繊細な音を出す事ができるので、オリジナルに近く演奏できると思います。時間がある時、ピアノの曲をオルガンで演奏して『音の深み』を経験しています。ドビュッシーも重要です。ショパンコンクール前の時期もたくさん演奏しました。ドビュッシーは色彩のコントロールと音の組み立てがとても大切です。音の一音一音の粒がそれぞれ色を持っていて、それが1つの色彩豊かな輪郭となっています。ドビュッシーの『12の練習曲』は、ショパンに大きな影響を受けた作品で、亡きショパンに献呈されていると言われていますね。ショパンを演奏するにあたってドビュッシーの練習曲を勉強した事が生かされ、ショパンの準備が出来たと思っています。

 私の演奏は、どちらかというと古典派の曲の演奏法の影響を受けているとも言われます。いつもできる限り楽譜に忠実にすべてを正確に表現しているからでしょうか。それは作品に込められた細やかな音色や感性を真っすぐに表現できると感じるからです。このことはバロックから古典派、ロマン派、近現代まで全ての時代の作曲家に対して言えることだと思いますので、古典派・ロマン派とこだわっておりません。私にもいつかラフマニノフを弾く日がきて、より可能性を秘めたピアニストに近づけるかもしれません。

一言一言、丁寧に誠実に答えるブレハッチ

-------それもまた楽しみですね!8月に初めてザルツブルグ音楽祭に出演するそうですね。

R:はい、光栄です。過去そして今年も著名なピアニストや音楽家が集まる権威ある音楽祭ですね。それに参加できることはとても名誉なことと感謝しています。会場もモーツアルトの国のアルプスの中の静かな町で、私の大好きな環境なので楽しみにしています。

-------演奏会、音楽祭と多忙な日々ですが、余暇はどうしているのですか?

R:ジョギングや森の散歩は、最近はできませんが、演奏旅行中の機内や宿泊先で好きな読書をしています。今読んでいるのは、「 PAVLO CUELLO 」というポーランドの古典の哲学者の本です。哲学には大変興味を持っています.車の運転も好きなので、ドイツ、フランスやアムステルダムの演奏会には、父と交代しながら車で移動しました。ドライヴしながら音楽を聞いたり、もちろん自分のCDも聴いたりして、演奏法を練っています。

-------運転中は危ないのでは?

R:そうですね、今までは大丈夫でした、(笑)。

終演後、サインを求めるファンに気さくにふるまうブレハッチ

  ブレハッチの演奏旅行はその後、スイス、ドイツ、スペインと続く。5月にアメリカ・カナダへのデビューとなるツアーが、10月はニューヨークフィルと、11月にはデイトワ&ロンドン・フィルと「ピアノ協奏曲1番」を共演することが発表されている。また、ブレハッチはポーランドの音楽界で最高位にあたる賞とされる「フレデリック賞」が与えられ、テレビでその授賞式がポーランド全土に生中継されるという。

 「日本に私のファンクラブがあります。」と、ブレハッチはときおり茶目っ気まじりに海外のジャーナリストたちに語る。日本は彼にとっては特別らしい。なにしろ2003年の浜松国際コンクールで無名だった彼が名を揚げた国なのだ。ブレハッチの『日本帰還』は、2009年2月。ベルリン放送響とベートーヴェン4番を共演する。

ブレハッチを囲んで、手前左が父クシストフ・ブレハッチ氏、右ポー友の会会長ヤブンスキ教授、その後ろが筆者

日本からのファンレターに喜ぶブレハッチ

次の来日は、来年2009年2月、マレク・ヤノフスキ指揮ベルリン放送饗と共演する予定

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今までの「ラファウ・ブレハッチを訪ねて」シリーズも御覧下さい。

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2008/2月 ブレハッチを訪ねて:11 ミラノコンサート

2007/3月 ブレハッチを訪ねての旅-1 ミュンヘン〜ナックオ記事掲載その1(月刊ショパン、ムジカノーヴァ)/   記事掲載その2(ピアノスタイル)

RAFAL BLECHACZ ブレハッチを訪ねてビドゴシチ:9(07/9)Ukonczona Akademia

ブレハッチを訪ねて8:名古屋公演プログラム 5.31.2007 Program koncertu w Nagoi

ブレハッチを訪ねて7/ドイツ〜ナックオの旅 04/2007 Podroz do Nakla

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