ショパンアカデミー学院春期セミナー2003報告

 

セミナーガイダンス(初日)中央左スメンジャンカ教授/ギエルジョド教授 壁には歴代学院長の写真

ショパンの母校ワルシャワ市のショパンアカデミー学院で2003年3月19日から4月1日まで、日本人のための春期ピアノセミナーが開催されました。

  

パレチニ教授レッスン風景 担当講師はショパンアカデミー学院教授陣のピオトル パレシニ教授(ショパン国際コンクール審査委員)、レギナ スメンジャンカ教授(ショパン国際コンクール審査委員)、カジミエシ ゲルジョド教授(ショパン国際コンクール審査委員、テレサ マナステルスカ教授、アンジェイ ドツキエヴィッチ教授(ショパンアカデミー学院ピアノ学部長)そしてカドビッチアカデミー学院から特別客員教授アンジェイヤシンスキ教授(ショパン国際コンクール審査委員長)を迎え個人レッスン4回、全教授のレッスン聴講。国立ポーランド初等中等音学学校でマナステルスカ教授の公開授業参観などの充実の日々を過ごしました。

   

ヤシンスキー教授レッスン風景  4回(各60分)と6回コースの個人レッスン(全て日本語通訳付き)と全てのレッスンが聴講でき、いろいろな角度から大いに学ぶことができました。練習室は滞在のジェカンカに設置してあり、朝から晩までレッスンと練習に明け暮れた日々でした。また、空き時間にはショパンツアーと称し、聖十字架教会、ショパン教会、ショパン像のあるワジェンキ公園散策、ショパン生家...とショパンの足跡を追いました。ワルシャワフィルのコンサート鑑賞、オペラハウスでの鑑賞、クラクフへは列車に乗って車窓からポーランドの田園風景をたっぷり満喫しました。

受講生のアンケートから:★スメジャンカ教授受講生『初めての「学び」初めての「音楽」を感じさせられる密度の高い、内容の濃い(深い)指導でした。』(大学院生) 『スメンジャンカ先生のように細かく丁寧に教えて下さる先生に初めて出会いました。音色の事やフレーズの事、いろいろなことが短期間で学べました。それも凄く分かりやすく教えて下さいましたので、幼い私にとって凄く嬉しかった』(音楽高校1年生)  ★ヤシンスキ教授受講生『始終一貫して「もっと自信を持って弾きなさい」と予期せぬお褒め言葉もいただいて心から嬉しくなるレッスンでした。私に一番欠けているところに光を当てて下さと思います。』(福岡ピアノ教師) 『先生はレッスンが終わった後も、御自分で弾いて下さったり、ためになるお話をしていただいたり、人格的にも素晴らしい方でした。』(愛知県立芸大生) 『先生のレッスンはニュークでした。先生が演奏され、その後の例えが分かりやすかった』(大阪音大生)  ★ギエルジョド教授受講生『とても細かい指導で、かつ男の先生ということもあり、音楽を大きくとらえられているところなど、自分の問題点を改めて認識できました。』(名古屋ピアノ教師)  ★パレチニ教授受講生『1曲に時間をかけて指導して下さり、細部まで行き届いたレッスンでした。』(桐朋学園大学生)

セミナーで一番心に残ったことベスト3:  1、素晴らしい先生との出会い、 2、ショパンの国でピアノが弾けた事/友情が芽生えたこと、3、ショパンの生家で修了コンサートができたこと。

マナステルスカ教授とショパン肖像の前で(ショパン生家にて)

『修了コンサートが、ショパンの生家で開催!』

担当教授推薦の受講生による修了コンサートがジェラゾヴァ ヴォラのショパンの生家の広間「音楽サロン」で演奏できることが今回特別に我々に開放され、実現されました。

従来ショパンの生家「音楽サロン」では、ショパンコンクールの入賞者など優秀なポーランド人または世界各国の著名ピアニストによるショパン作品演奏が、5月から9月末まで祝祭日と日曜日の11:00と15:00に開催されていますが、このコンサートは偉大なピアニストで教育者でもあったスビグニェフ ジュヴィエツキ教授の発案により1954年以降ずっと続いています。1994年からは7月8月の土曜日に「青少年の舞台」というシリーズで若き期待されるピアニストのためのコンサートが企画されました。

   

修了コンサート風景:ショパンの生家内/音楽サロンで  ワルシャワ市から西へ54 KMのマゾフシェ地方に位置するウトラタ川のほとりにあるジェラゾヴァ・ヴォーラ、「ショパンの音楽が、いかにポーランドの農村風景と結びついているか、ジェヴァゾラ・ヴォラほど、それを深く理解させてくれる場所は他にない」と伝えられています。ショパンが生まれて7ヵ月後に、一家はワルシャワに移りましたが、 ショパンは家族と共に少年時代、長い休暇になるとワルシャワ郊外のこの村へよく遊びに来ました。村の農民達は土を耕しながらポーランド民謡を唄い、収穫の後にはひとしきり軽快な民俗踊りを楽しむ。ショパンも農民達とこれらの時を過ごしました。この時期が彼をすぐれたピアニストとして国の内外でその名の知られるまでに成長させたのです。

その生家での修了コンサートに感動した受講生の感動の声。「ショパンの愛国心、音楽に寄せる心、時代は背景を想像しながら表現して演奏することができました。」(ピアノ教師)「ショパンの息吹が感じられる生家で演奏でき素晴らしい経験をさせていただきました。」(音大生)

3月はさすがに夏のような観光客はありませんが、それでも旅行者は受講生の修了コンサートに耳を傾けて拍手を送りました。早春のポーランドで受講生はショパンの音楽の神髄を受講しました。

修了コンサート演奏者:瀬川由馬(ピアノ演奏者)ポロネーズ5番、菊池安希子(愛知県立芸大)マズルカ作品17-1、2、長谷川恵美子(ピアノ教師)バラード第3番、藤井恵(桐朋学園)舟歌、萩原麻未(広島音楽高校)ソナタ第3番の一楽章、島貫愛(桐朋学園)スケルツォ第3番、山本貴志(桐朋学園)英雄ポロネーズ。

  『3人の音楽初等科/高等科の生徒の授業を聴講』

マナステルスカ教授の公開授業を参観して:受講生(福岡出身ピアノ教師)

  

マナステルスカ教授公開授業参観  10歳位の高等科男子の公開レッスン曲は、子供の為のロバの物語を題材にした小曲でした。曲中の色々なパッセージがロバの鳴き声であったり、重い荷物を運ぶのろのろしたロバの歩み方であったりコミカルな表情を音で表す事に恥ずかしがらずにトライするように促され、生徒には「この音の響きで何を想像する?」と尋ねられたり、「ロバの様子を動作で真似してごらん。」といったリクエストに男の子は真っ赤な顔で恥ずかしがっていました。高等科の女の子はベートーベンのバリエーション(変奏曲)を演奏されました。大変上手な演奏でした。先生からのご指摘はそれぞれの変奏曲の性格の変化をはっきりと表現するために拍子感、リズム感を意識することや、細かな速いパッセージを無表情にならないように強弱メリハリを意識することなど指摘されていました。もう一人の高等科の男の子はショパンエチュードのop25のNO12ハ短調とカロル・シマノフスキー作曲のプレリュードop1(全9曲)の中からNO7を演奏されました。エチュードは幅広い音域(鍵盤の端から端まで)を弾く際に身体を左右に動かさないで弾くこと、また音が下行する際左手の音が不明瞭になりやすい傾向があるのでよく聴いて練習すること、練習の仕方も和音でグルーピングしながらポジションの移動を意識し和音の変化に伴って強弱やクライマックス(前半、中盤、後半)を作り上げフレージングを大きく把握すること、また目を閉じて弾いて正確に弾けるかトライすること(これはなかなか難しいです)シマノフスキーの作品も同様に曲のもつストーリー性を語るが如く感情の高ぶり、心に秘めた悲しみ、ドラマチックな訴え等を素直に表現することをためらうなという、アーティスティックな演奏を志すようにご指導されていました。「語るが如く弾け」もしくは「弾くな、語れ」の境地と申しましょうか・・・・。弾き手(受講者)側の集中力そして感性、受け止める器、勤勉な練習の積み重ね、そのどれが欠けても成立し得ない先生の音楽、芸術に寄せる熱い想いのこめられたレッスンでした。

  

ショパン生家前で優しかったマナステルスカ教授と門下生

(追記)セミナー受講生はジェカンカ寮から徒歩で10分程の小等高等音楽学校 Midowa street(日本の小学、中学、高校にあたる)へマナステルスカ先生のレッスン参観にでかけました。ワルシャワには小等高等音楽学校が公立学校では6校、複合学校が5校、私立学校が16校、その他2校あります。

ショパンアカデミーのカフェテリアで昼食(中央に浜松国際ピアノセミナー2003受講だったパレチニ教授門下生と、ポーランド料理に舌鼓)


記録:事務局影山美恵子 2003/4

e-mail: mieko@orange.ne.jp

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